今回は財形年金と財形住宅についての特徴と考察について書いてみたいと思います。
今回紹介する「財形年金・財形住宅」と「一般財形」の記事を分けたのは、税制面の優遇という措置があるかないかという違いがあるからです。
一般財形や財形貯蓄制度については以下の記事にまとめてあります。
財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄とは
積立方法などは一般財形と同じで、給与・賞与の天引きにより、資産形成を行います。
ただし、一般財形と異なる点もあります。
・積立資金の使用が年金受取、住宅購入に限られる(一般財形は使用目的が自由)
・1人で複数の金融機関と契約ができない(一般財形は複数契約可能)
・契約時に55歳未満であること(一般財形は年齢制限なし)
・5年以上、積み立てること(一般財形は3年以上)
・一定額の積立金額まで非課税となる(一般財形は税制の優遇がない)
一般財形の積立期間が3年に比べ、財形年金・財形住宅の積立期間は5年間と長いのが特徴です。
若い時から利用するとそれなりに長期間の貯蓄となるので、どの金融機関が利用できるのか、どのような貯蓄商品が利用できるのかを確認してから契約をしましょう。
預貯金(定期預金・定期貯金など)、合同運用信託、有価証券(国債などの公社債・証券投資信託の受益証券・金融債・株式投資信託)、生命保険、生命共済、損害保険
財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄のメリット
財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄をする上でのメリットは以下の3点でしょう。
①一定額の積立金額まで非課税となる
②「財形持家融資」が利用できる
③普通預金に比べ、若干金利がよい
商品別に一定額の積立金額まで非課税となる
財形年金・財形住宅では、「貯蓄型」といわれる商品の場合、元利合計550万円を限度に、利子等が非課税となります。
通常の普通預金・定期預金の場合、利息は課税対象となることからも、銀行などの定期預金よりも有利になっています。
しかし、積立額が限度額を超えると、その後に生じる利子には、通常の普通預金や定期預金と同じように、20.315%が課税されます。
また、貯蓄商品のうち、「保険型」と言われる郵便貯金、生命保険、損害保険の保険料、生命共済の共済掛け金、簡易生命保険(年金商品)の保険料にかかるものについては、元本385万円を限度に、利子等が非課税となります。
これらの商品は払込保険料の合計385万円を限度としているため、これ以上の払込みはできない仕組みになっています。
また、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄の2つを利用している場合には、合計550万円までが非課税となります。
つまり、財形年金貯蓄だけで300万円、財形住宅貯蓄で300万円が貯蓄されている場合、50万円は課税対象となります。
「財形持家融資」が利用できる
こちらは一般財形でも紹介した制度です。
財形貯蓄残高の10倍以内で最高4000万円まで、住宅取得(もしくはリフォーム)に要する費用の90%以内までの融資が利用できます。
完済時の年齢が80歳まで、1年間の積立と50万円以上の積立金額が必要、勤務先から「住宅手当」の負担がある、など条件はあります。
普通預金に比べ、若干金利がよい
こちらも一般財形で紹介しましたが、普通預金に比べ金利がよい場合があります。
中には高金利の商品もありますが、当然リスク・リターンの関係がそこにはあり、元本割れの場合もあります。
イメージとしては定期預金の金利程度くらいでの運用だと考えていたほうがよいでしょう。
財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄のデメリット
デメリットは以下の2点です。
財形年金貯蓄は他の年金運用手段と比べ、掛金段階での税制優遇がない
財形年金を契約して給与・賞与天引きを行う場合、その掛金を支払う段階での税制優遇はありません。
一例として他の年金運用の掛金の場合、以下のような税制優遇を受けることができます。
※「個人年金保険」は新制度の場合
年金資産の形成が目的であれば、掛金積立の段階から税制面で優遇されるものを選んでおけば、老後までの納税額を安くできます。
一方、財形年金を利用する場合はこのような入口段階での優遇措置がなく、単純に積立期間中の非課税というメリットしかありません。
使用目的が限定的
2つの財形貯蓄は名称に「年金」「住宅」とあるように、使用目的が決められています。
しかし、厳密には目的以外に使用することが「できない」というわけではありません。
人生何が起こるかわからないため、もしかしたら急な出費で、貯金を崩さなければならない場面があるでしょう。
たとえば60歳未満で年金以外の使用目的(40代、50代で引き出すなど)では通常の預貯金と変わらず、非課税という税制上の優遇が消滅します。
この税制上の優遇はあくまで「年金資産形成(住宅購入資産)での貯蓄」として存在しているため、引き出してしまうと「貯蓄型」の商品の場合は過去5年間に発生した利息まで遡って20.315%が課税されます。
「保険型」の商品は解約返戻金・積立配当金の差益に対して20.315%が課税されます。
目的があっての形成だからこそ、一般財形と区別されているので、「すぐに引き出してしまうかもしれない」という場合はこの制度の恩恵はなくなります。
ただし、災害や失業など以下のようなやむを得ない場合で資金が必要となり、税務署等が認可した場合に限り、非課税の措置は消滅しません。
・本人または生計を一にする親族が所有する家屋が災害等で被害を受けた
このような場合は必要な手続きを経ることで、税制優遇の措置を受けることができます。
まとめ:財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄は必要か
正直、メリットがあまりありません。
今後住宅を購入するための予備資金であったり、老後が不安で今から少しずつでも資産形成をしたいと思っていたりする人であれば、契約してもよいでしょう。
しかし、現在では住宅ローンが低金利が続いていること、年金運用のために税制優遇がされている他の制度があることなどから、あえて財形貯蓄を行う必要性がありません。
もし本気で老後の資金を形成したいと思うのであれば「iDeCo」や「個人年金保険」で優先的にやるべきでしょう。
それこそiDeCoは60歳まで原則引き出すことができません。
給与口座からの振り込みにも対応しているため、ある意味強制的に口座引き落としされます。
iDeCoに関する記事はこちらからどうぞ。
積立方式の資産形成の場合、税制上のメリットがあれば「節税+資産形成」として現役世代にとってメリットとなります。
40代を過ぎれば、ある程度は残りの期間で稼ぐことができる給与の目途がたってしまうため、節税などをすることで生活資金の確保にもつながります。
まずは節税できるiDeCoや個人年金保険を契約して、さらに不安であれば財形年金貯蓄を考えてはどうでしょうか。
また、財形住宅貯蓄は、積立金額の部分を頭金にする程度でよいかと考えます。
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