簿記検定ではほぼ基本事項として貸倒引当金が登場します。
しかし、会計担当でもない限り、日常で貸倒引当金などという言葉は滅多に聞きません。
ここでは貸倒引当金とはどのようなものなのかをわかりやすく説明します。
実際の貸倒引当金の仕訳についても下記にまとめてあります。
貸倒引当金のイメージをつかもう!
貸倒引当金とは、自分の売上代金が回収できなくなることを考えて、あらかじめ設定しておくお金のことを指します。
理解しやすいように順を追って解説します。
あなたがコンビニで何かを買うとき、当たり前ですが必ずお金を支払いますよね?
個人⇔企業間では、基本的にお金と物との物々交換が成立するわけです。
企業⇔企業の取引では商品を販売する際、個人と違って「売掛金」などの信用販売をしています。
個人とは違い、企業は社会的信用が高いです。
「よく利用してくれる取引先だから、代金の支払いは後ほどまとめて請求します」ということができます。

しかし、企業間の取引でも倒産や、資金繰り悪化などで商品代金の未払いになるなどのリスクが伴います。
この商品代金が未払いになったまま回収できずに損失となることを「貸倒れ」と言います。
貸倒れ(かしだおれ)とは、売掛金や貸付金などの債権が、倒産などの理由で回収できず損失となること。またはその損失の金額をいう。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
もし「取引先が倒産してお金が回収できなくなった!」ということが急に起こったら大変なことになってしまいます。
売上代金未回収になるリスクをあらかじめ含めた経営をするため、資産の一部をあらかじめ負債として計上する「引当金」というお金を準備することができます。
引当金とは損失に備えるお金のことを指します。
引当金(ひきあてきん、英: reserve)とは、将来の特定の支出や損失に備えるために、貸借対照表の負債の部(または資産の部の評価勘定)に繰り入れられる金額をいう。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
テレビドラマの『半沢直樹』の中でも、伊勢島ホテルの場面で引当金という言葉が登場しました。
将来的に発生する可能性のある支出や損失に備える、中でも売上代金の未回収という事態に備える(=貸倒れに備える)目的で引当金を設定するため、「貸倒引当金」という言い方をします。
貸倒引当金は現金を用いない取引で設定する
貸倒引当金は現金を用いないで商品を売った場合に発生します。
下記のような勘定科目で貸倒引当金を設定することがあります。
(試験にほぼ出る)売掛金
(結構試験に出る)受取手形
(時々見かける)未収金・貸付金 など
例えば100円の商品を売り、商品代金は売掛金としたとしましょう。
売り渡した側は代金をまだ回収できていません。
この売掛金が回収できなくなるおそれを考慮して売掛金の〇%を引当金として設定する、という形です。
実際の出題例からイメージする
この場合、売掛金の未回収分が1,000円分あるということです。
そこで、貸倒に備えて1,000円の5%にあたる50円をあらかじめ費用として計上することになります。
以下が仕訳になります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金繰入 | ¥50 | 貸倒引当金 | ¥50 |
「貸倒引当金繰入」は費用の勘定科目 | 「貸倒引当金」は負債の勘定科目 |
貸倒引当金を負債として設定するため、借方(左側)には費用勘定である「貸倒引当金繰入」という勘定科目を対にします。
それにしても…なんだよ、たった50円かよ…
そう思いますよね?笑
しかし企業間ではもっと大きなお金が動きます。
検定では5~7桁くらいの売掛金が出てきます。
3,000,000円の未回収代金があり、5%の引当金を設定した場合150,000円の引当金になります。
このような形で貸倒れを見積もって設定する仕訳が検定試験には出題されます。
貸倒引当金の設定には差額補充法と洗替法があります。
基本的には差額補充法が一般的です。
貸倒引当金の設定方法は下の記事で解説しています。
もし貸倒れが発生したら…?
貸倒れが発生した場合、以下のようなパターンが考えられます。
貸倒引当金を設定していた場合
貸倒引当金をもともと設定してあり、なおかつ貸倒引当金の金額より未回収金額が少ない場合の仕訳です。
負債である貸倒引当金を減らし、回収できなくなった売掛金を減らします。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金 | ¥200 | 売掛金 | ¥200 |
貸倒引当金をもともと設定してあるが、引当金の金額よりも未回収額が多くなる場合、設定しておいた引当金を超える分の損失が生じます。
そのため、借方(左側)では2つの処理をしなければなりません。
手順② 貸倒引当金を超える損失額を「貸倒損失」として計上する。
引当金を超える金額の処理には「貸倒損失」という費用の勘定科目を用います。
そして、貸方(右側)では売掛金の未回収金額を減らします。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒引当金 | ¥500 | 売掛金 | ¥1,000 |
貸倒損失 | ¥500 |
貸倒引当金を設定していない場合
あまり出題はされませんが、このようなパターンも中には存在します。
この場合、引当金を設定していないため、全額を「貸倒損失」として処理します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
貸倒損失 | ¥200 | 売掛金 | ¥200 |
まとめ
素人の方にとっては貸倒引当金は聞きなれない言葉であり、難しく感じてしまうかもしれません。
いったん負債として設定しておくことで、代金が未回収になった場合の衝撃を和らげるものになります。
少し異なりますが、「友達に10,000円貸したけど…あいつはだらしないから、半分の5,000円戻ってくればいいほうかなぁ」と心の中で準備しておくことを帳簿でやっているということです。
こんな友達も嫌ですが…笑
仕訳の練習問題を解く際には、頭の中でイメージを浮かべながら取り組んでみましょう。
今日も勉強お疲れ様です。
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